葦束漂流記

漂流者。Y世代のしがないサラリーマン。

ルールのある世界ない世界

昨日多くの国立大学で大学の個別試験(二次試験)が行われた。

2020年度の受験生は、

・コロナ影響

・入試改革影響(センター試験→共通テスト)

と例年にない変化への対応が迫られ、

中には、1か月前頃になって個別試験を廃止するなど想定外の憂き目にあった受験生もいたであろう。

 

さて、入試改革については、直前ではないが、

・民間の英語検定の利用に関する問題

・共通テストで記述式の出題をするしない問題

などへの判断がなされ、一部に入試内容の2年前告知ルールに反しているのではないか、など多くの不満が寄せられた。

 

翻って、経団連が「Society 5.0 に向けて求められる初等中等教育改革 第一次提言」

VUCAの時代を生き抜く素質を教育に求めるなど、「これからの世の中は予測不可能な時代である」との見方も多い。

出典:https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/063_honbun.pdf

 

*VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つのキーワードの頭文字から取った言葉

 

一方では、ルールの周知徹底が重要であるといい、他方では世の中は想定外に瞬く間に変化する、というモデルで思考しているわけだ。

 

 

実際、入試においては、「教科科目」「教科科目数」「配点」「解答時間」「出題分野」「出題形式」が重要であることは言うまでもない。

だからこそ、東大に受かった人が早慶に落ちることもあれば、京大に受かった人が同志社に落ちることもある。

 

本命の志望校の科目数が多い場合、学習が分散しがちなので、2科目に集中して受験した学生と同じ募集単位で受けると後塵を拝することもあるし、マーク式ばかりを鍛錬し知識としては大体わかっていてもいざ記述式で歴史上の人物名を漢字で答えなければならなくなると、書くことができなかったりというのはよくある話だ。

 

そして、このような「配点」「出題分野」などが2年前からあらかじめ提示されているならば、それに対応してやろうと”対策”する人たちがいることは否定できないし、否定すべきでないだろう。

 

 

一方で、経団連が言うように、社会人ともなると、大体の評価はわかっても、いちいち、「マナーが何点」「コミュニケーションが何点」「アイデアが何点」などと評価観点と自分の得点がわかるわけではないし、何点取ったら大体出世だ、というのがわかるわけでもない。なんとなれば、それこそVUCAで今までの基幹事業が黒船到来とかで切り捨てる分野になればそこの技術者全員が冷遇されるということもあるだろう。

 

極論を言うと、本当にVUCAの時代が来るとして、それに対応する高い対応力をつけてほしいのならば、意図せず今年そのようになったように、直前まで受験生に配点や解答時間、出題科目を教えない、くらいした方がよほど瞬発力のある学生が合格しそうである。

もちろんその逆の用意周到にあらゆる科目であらゆる出題形式の練習をこなしてきたという準備万端の猛者ももちろん合格できるだろう。

 

 

 

ー大学入試は、選抜なのか達成度の評価なのかー

 

これもまた、入試改革を巡って委員たちがもめていたことではあるが、大学入試は「選抜なのか」「達成度の評価なのか」。おそらく日本は前者であろう。

 

大学入試の試験が、「大学で学ぶに足る基礎知識の有無を判断する」「大学で学ぶに足る意欲を評価する」などであれば、後者でよいはずで、英検や漢字検定のように、70%以上得点すれば全員合格とか、80%以上得点すれば全員合格とかすればよい。

 

しかし、現状は異なっており、たまたまその年の倍率が高いと、例年の合格点に達していても落ちるし、それこそ、定員厳格化で合格最低点が上がった、などというのも、それが、学力の水準の確認のための試験ではなく、あくまで「選抜」のための試験であるからだろう。

 

その点でいえば、むしろ大学入試は実社会の会社に近く、会社が急拡大中で幹部がいなければ、早い段階で管理職に就くフェーズもあるし、逆にうえが詰まっていて万年ヒラ社員であったということもあるだろう。

 

コロナで大学もオンラインが多いと聞くので、であれば場所の制約もないので、基準を満たす得点であれば皆合格させても面白いのではないかと思うのだが、そういう風にはならないのだろう。

(なると、益々つぶれそうな大学が増えそうなのと、有名大学の学生が増えると逆にその大学を卒業したという希少性が落ちそうなのでブランドが低下しそうだ)

 

これから就職される人にはルールのある世界とルールのない世界のいずれかであるかをしっかり見極めてもらいたいものである。

もちろん、昇進試験など会社員にもルールのある試験があることもある。

 

では!